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中国のある地方では五香の儀式という風習がかつてあったそうだ。

生まれたての赤ん坊にまず酢を舐めさせ、塩を与え、苦い薬を与え、棘のあるカギカズラを舐めさせ、

最後に砂糖を舐めさせるという。

「人生とは酸っぱくて、しょっぱくて、苦くて痛いものである。

そしてそういう思いを経験して初めて甘いものが味わえる。」という教えである。

 

この話を引き合いに出し、私が当時所属していた支社長が新卒の私たちにこう述べた。

「社会人としての人生は長い。学生時代とは勝手が違うことに当然戸惑いもあるだろう。

しかしながら様々な事から逃げていては、未来はないのである。後楽主義の方が必ず成功する。」

数十年も前のおぼろげな記憶ではあるが、当時の私たちは何らこの話に疑問を抱くことなく聞いていたように記憶している。

 

今年の新卒研修で、この 五香の儀式 の話を研修題材にした訳ではないのだが、

あえて同じ話をしたらどういう感情を抱くのかという事を、聞いてみても良かったのではないかと資料の整理をしながら

今振り返っているところである。

 

VUCAの時代と言われて久しいが、時代は令和となり、様々な価値観が多様化する中、

旧態依然の価値観の押し付けはもう通用しない時代となってきた。

 

先日、室伏スポーツ庁長官の定例会見で過度な勝利至上主義への警鐘として、柔道競技における小学生の全国大会中止が発表されていた。

個人的な考えとして、競技人口にそれぞれ大きな差があるため、全ての競技が右に倣えになる必要はないとの考えなのだが、

柔道以外の競技団体でも同様の動きがあるようだ。

 

親であれば、「この子の将来を考えて・・・」、指導者であれば、「選手の将来を考えて・・・」と大義名分は立つのだが、

やはりそこに隠れた矛盾が生じているのが現実なのではないだろうか。

 

「温故知新」

古きを訪ねて、新しきを知る。

 

印籠を振りかざすだけの指導者が淘汰される時代は、もうそこまで来ているのかもしれない。